言葉マジック。

昭さんという、凄腕の里親の方がいる。

今まで何人も高齢児童を育てあげ、問題児が、みるみる内に変化を遂げる。

その変貌ぶりに、どんな魔法をかけたのかと、いつも不思議に思う程。

私にも「何かあったらいつでも連絡して」と会う度に言ってくれる昭さんに、現在預かっている高校生の事で相談の電話をかけると、とにかくいつでも、どんな時でも、自分都合はさておき、心からの相談にのってくれる。

人は「いつでも相談して」とは言えても、実際にいつでもは相談に応えられない事は多々あり、だからこそのこの昭さんの姿勢は、中々真似が出来るものではない。

相談する度に、求めている的確な答えをズバッと言ってくれる様は、もはや神がかっていた。

そんな昭さん宅に一度、うちにいる高校生を、レスパイトいう制度を利用して、3日間預かってもらう事にした。

無口に加え、無表情・無感情・無感動の彼女は、3日間で、魔法がかけられた。

帰って来ると、そんな彼女でさえ「昭マジックにかかった」と言った。

昭さんから発せられる言葉は、心に深く突き刺さり、心を深く打たれ、心を揺さぶり、人の内に秘める感情を表に出させてくれる。

まさに「昭マジック」なのだ。

昭さんから、彼女が自分の生い立ちや、自分の感情を内に押し込めなければ生きていかれなかった今までを語った事を聞いた。

そして、昭さんに、私達への感謝の言葉を話してくれたと知った。

電話越しに、涙が出た。

日々は、重苦しい毎日ながらも、それでも彼女にとっては多少なりとも救われた場所になっていた事が、とても嬉しかった。

彼女はあれから、少しずつ変化を遂げている。

日々の会話は一方的な私の喋りでも(笑)、「行ってらっしゃい」「ありがとうございます」など、小さな言葉をかけてくれるようになった。

そして今まで、天麦くんとのほとんどゼロだった会話が 、天麦くんが「カッコいいでしょう?」と言えば「カ、カッコいいね…」とギクシャクながらも返してくれるようになり、私は心で笑った。

それでももちろん、日々は劇的には変わらずとも、少なからず私達に寄り添おうとする頑張りを感じる事は出来る。

高校卒業後は、進学か就職かと進路を選ぶ話しの中で「自分は社会の不適合者だから、バイトみたいなすぐ辞められる仕事に就きたい」と、彼女は語った。

高1で社会の不適合者と自覚してしまう様に、悲しさを覚えつつ、そんな彼女の一言には、一瞬言葉を失った。

もちろん、否定はしなかったし、アルバイトが悪い訳ではない。

出来れば保証ある人生を送って欲しい…
ただそれだけだ。

不適合者と感じずにはいられない人生を歩んできた彼女だったにせよ、それには否定をした。

本来世の中にそんな人はいないはずなのに、そう感じずにはいられない人格を作りあげたのは、決して彼女だけのせいではない。

親の使命を、強く強く感じた。

昭さんの言葉に、これからも私達は生きる糧をもらい、心に潤いが持たされ、人生が満ちる。

私が彼女にしてあげられる事はほんのわずかでも、昭さんの言葉を借りながら、そしてこうして皆で育てていける環境に有り難く思いながら、これからも自分なりの頑張りで、里親の明日への道へと繋げていきたい。

先日、ショッピングセンターにて「里親フェスタ」が開かれ、昭さんがトークセッションにゲストとして招かれた。

今迄育て上げた、保育士になった女の子も観覧に来ていた。

昭さんの家には、今現在実子の娘さんと共に、高校生の女の子が二人、5才の女の子がいる。

来月には、他の家庭の高校生も誘い、昭さん主催のカラオケ会が企画される。

引きこもりの男の子も、このカラオケだけは心の底から楽しみにしているらしい。

「昭さんマジック」にかかる大人・子どもは続々増加中…(笑)