自宅近くに、お気に入りのラーメン屋さんがある。
日本そば風そばつゆタイプの醤油だれ、鶏ガラスープ、昆布や椎茸、これらを使った和テイストのオリジナルスープが味わえるこのラーメン屋さんの最大の特徴と言えば、名物の「レモンラーメン」&サクサク美味しい大きな鶏天。
メディアにも何度も取り上げられ、当時はテレビで芸能人が「レモンラーメン」を食している番組がいくつもあった。
そんな頃はお店も賑わい、並んでいるお客さんの姿も見られ、通常でもカウンター席や家族優先の一ヶ所部分のテーブル席はほとんど埋まり、盛況を見せていた。
私もオープン当初の10年前から、時折食べに訪れていた。
レモンラーメンが気になりつつも、決まっていつも食べるのは、普通のラーメンと鶏天の組み合わせ。
初めて食べた時は、和テイストの新たなジャンル的ラーメンに、心揺さぶられた。
喉越し良くスルスルと入っていき、スープもサッパリ飲み干せる。
そんなラーメンを作る店主の方は、きっちりとされた昔ながらの、筋の通った仕事人のような、真っ直ぐな方の印象。
いつも、私達親子はその店主の方を前に、緊張しながらカウンター越しにラーメンを食べる(笑)。
そして、天麦くんが先に静かにラーメンを食べ終えると、食後にはお店に置いてある絵本を取りに行き、又も静かに見ながら私が食べ終えるのを待つ(笑)。
そのラーメン屋さんに行くと、なぜか心もシャキッとなり、ラーメンにも心癒され、元気をもらえる。
そんなラーメンを、コロナ禍以来、又久しぶりに食べに行った。
その時は数名のお客さんがいて、私達はほとんど無言で食べつつ、食した後には久しぶりに元気で清々しい気持ちになれた。
その後行った際には、ちょうどお客さんは私達だけだった。
益々緊張が高まりながら(笑)、カウンター越しに親子黙ってラーメンを食す。
前回来た時にどこかで無くした、自転車の鍵の落とし物を店主の方に訪ねると、丁寧に調べてくれた。
その事をきっかけに、コロナ禍の中でのお話しを聞くと、店主の方は、高齢の親御さんのいる地元に帰ろうと、本来はコロナの前に店を閉めるつもりだったと言う。
そして、このコロナで、店の売買も白紙に戻り、現在に至る事を聞いた。
心なしか、元気がないようにも見えた。
「頑張って下さい」の言葉は、何だか違うような気がしていた。
「このラーメンは、食べると元気になれるんです!!又頑張ろうって思えるんです!!」そんな言葉が精一杯だったが、それは、心の本心だった。
お店を出ると、ちょうどお店の明かりが落とされ、店主の方は、私達にいつまでも手を振ってくれた。
コロナ禍での飲食店経営は、「頑張って」の一言では、到底追い付かない。
未来の雲行きも晴れない。
けれどもここに、ラーメンを食べて元気が出る親子がいる。
又元気ラーメンを食べに行こうと思う。